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金剛石とはダイヤモンドの和名です。金剛という言葉は仏教用語で、仏の一部が宝石となったとも言われています。金剛石と呼ばれていた時代には富の象徴として一部の特権階級だけが手に入れる事のできた宝石です。日本では少なくとも明治中期までダイヤではなく金剛石という名で定着していました。
執筆者はしまだです。米国宝石学協会GIAホルダー、年間30件以上の鑑定に携わる。現在、Gem-A FGA取得に向けて研鑽しています。記事の編集ポリシー・レビューガイドラインも併せてご確認ください。
金剛石とはダイヤモンド
金剛石とはダイヤモンドの和名です。
ダイヤ以外にもルビー(紅玉)やサファイア(蒼玉)などの宝石も昔は和名で呼ばれていました。金剛石の由来は、金石の中で最も硬く壊れない様から、仏教で使われる金剛不壊(不壊金剛ともいう)から転じて、16世紀に入って金剛石と呼ばれるようになりました。
浅草に代表される金剛力士像は仁王と呼ばれ、仏教では守護神として信仰されており、金剛石も守護石として古くから重宝されてきた宝石です。
ちなみに、ダイヤの語源はギリシャ語のアダマス(adamas)で、打ち勝ちがたいものと意味されます。金剛石もサンスクリット語のバザラ(vajra)の中国漢語訳で、和洋問わず最も硬い宝石として注目され名づけられました。
仏教における金剛石は宝石ではなく仏の体?
仏教では仏はダイヤモンドで出来ていると考えられています。
大乗経典である維摩経によると、「如来の身は金剛の体なり」と記載され、金剛石は仏の一部と言っても過言ではないのかもしれません。
金剛石が日本に広まるまでの歴史
金剛石が日本に入ってきたのは江戸時代です。
江戸時代後中期、蘭学者である平賀源内が、物産会に金剛石の原石を出品したことから、金剛石が広く世に知られるようになりました。その後、幕末になって皇室をはじめ名家を中心に金剛石が広まり、1860年には摂津守の木村喜毅が遣米使節として渡米した際に、アメリカ大統領夫人から5カラットの金剛石を贈られました。
実際に一般大衆まで金剛石が広く浸透するのは戦後(昭和初期)で、その頃には金剛石という呼び名は廃り、ダイヤとして定着してゆきました。
金剛石と呼ばれていた時代は明治まで?
昭憲皇太后は和歌で有名で日本初の校歌を作った事でも有名です。
金剛石に因んだ和歌は、明治20年に学習院(女子)に下賜され、現在でもお茶の水女子大学(当時の東京女子師範学校)で歌われています。
金剛石もみがかずば 珠のひかりはそわざらん
人もまた美手のちにこそ まことの徳はあらわるれ
時計のはりのたえまなく めぐるがごとく時のまの
日かげをしてみれはげみなば いかなるわざかならざらむ
少なくとも明治中期までは、ダイヤは金剛石と呼ばれていました。
あとがき
金剛石と呼ばれていた時代は皇室を含めた特権階級だけが手にできる宝石でした。
もしかすると第二次世界大戦の終戦時までは金剛石と呼ばれ、終戦を機に大衆へ広まる際にアメリカ文化の浸透と共に横文字であるダイヤと併せて定着したのでは?と乱暴な推察しかできません。実際にはいつの時代まで金剛石と呼ばれていたのか不明なので、調査の機会を見つけて追記する予定です。お楽しみに。