遺骨をダイヤモンドにして供養できます。骨(遺灰)や髪の毛からダイヤを組成する事で、宝石として身に着けたり、自宅でも容易に保管することができるようになります。実際にかかる費用などをブランド別に調査。納期こそ最低6ヶ月以上かかりますが、新たな息吹を与えてくれる事の出来るサービスは、現状では遺骨ダイヤの他にはありません。
執筆者はしまだです。米国宝石学協会GIAホルダー、年間30件以上の鑑定に携わる。現在、Gem-A FGA取得に向けて研鑽しています。記事の編集ポリシー・レビューガイドラインも併せてご確認ください。
遺骨からダイヤモンドへ新たな息吹を
遺骨ダイヤモンドとは遺骨からダイヤモンドを人工的に作り、新たな息吹を芽吹かせる新たな供養の手法です。
遺骨や髪の毛などの人が持っている炭素を抽出し、人工ダイヤへと組成させます。近年、人工ダイヤの製法技術も高まっているため、遺骨ダイヤの透明度は比較的高く、余計な加工やトリートメントなどを行いません。
そのため、カラーレスからブルーの遺骨ダイヤが主流で、生成過程の触媒の違いによってカラーが決まります。他に遺骨ダイヤで指定できるのはカッティングぐらいです。遺骨ダイヤは原石のままでも魅力的で、世界で唯一のダイヤとして生まれ変わります。
遺骨をダイヤモンドにする魅力
遺骨をダイヤモンドにする魅力は新たな偲び方ができることです。
大切な存在を今までとは違う形ではありますが、自分のそばに置けることは大きな魅力です。大切な存在を失った時、どのように向き合えば良いのかすぐに決断するのは簡単ではありません。時間をかけて心の隙間を埋め、世代を超えて遺骨ダイヤを守護石として受け継いでゆくのも風情があります。宝石として特別な日につけるも良し、肌身離さず普段使いするのも自由です。
また、お墓や家系に縛られず供養できます。宗教・宗派に関わらず、日本ではお墓への納骨が一般的で、都市部では集合型の永代供養施設も少なくありません。勿論、最初からお墓を無くしましょうという話ではなく、家の歴史を受け継ぎながら、一部を遺骨ダイヤとして身近に保管する事もできるでしょう。
骨からどうやってダイヤモンドを作るのか?
骨からダイヤモンドを作る場合、天然ダイヤが生成される環境を再現する高温高圧法(HPHT)によって人工的に組成します。
遺骨ダイヤは、まず骨や髪の毛から炭素を抽出し、その炭素を原料にしてダイヤの原石が生み出されます。本来、ジュエリー用の人工ダイヤには化学気相蒸着法(CVD)が採用されますが、遺骨や髪の毛といった不純物の多い素材から炭素を抽出するため、遺骨ダイヤには向いていません。
人工ダイヤに関しては下記の記事で掘り下げて紹介していますので、併せてご覧ください。
遺骨ダイヤに必要となる骨(遺灰)の量
遺骨ダイヤに必要となる骨(遺灰)の量は400gが目安です。
この量の遺灰となると、一般的な成人男性の1/4から1/5に相当します。骨壷に入り切らない遺灰は、火葬業者が処分してしまいますので、この入らない量だけでも遺骨ダイヤを作る事は可能です。
遺骨ダイヤに必要となる髪の毛の量
遺骨ダイヤに必要となる髪の毛の量は8gが目安です。
髪の毛はご存じの通り、遺骨より炭素を多く含むため、少量で十分な炭素を抽出できます。遺骨を準備するのは抵抗があっても、髪の毛であれば生前に調達することも可能なため、ハードルは随分と下がります。
ペットにはメモリアルダイヤモンドとして
ペットの遺灰からも遺骨ダイヤは作れ、メモリアルダイヤモンドして注目されています。
昨今ではペット葬の施設やお墓も増え、ペットの供養は一般的になってきました。多くの場合、火葬後に自宅または納骨堂で埋葬しますが、保管場所を考えると、かけがえのない存在を偲ぶためメモリアルダイヤモンドとして再び我が家に迎えるケースが増えています。
ペットの場合、必要な遺骨や毛の量が人と違います。おおよそ中型犬程度以上(目安として300g/遺骨、10g/毛)でないと炭素が足らないため、それ以下の場合には天然炭素を追加で依頼する必要があります。
骨から作られた宝石とは一目で見分けがつかない
骨から作られた宝石とは一目で見分けはつきません。
実際に、遺骨ダイヤのサンプルを見てもらうとわかります。例えば、遺骨ダイヤを一般的な4Cのような品質基準で評価すれば、高評価されるような基準ではありません。しかし、遺骨ダイヤの美しさの基準は個性であり、不完全な姿に生前の姿を重ねたりして偲ぶはずです。また、骨から作られたとは言え正真正銘のダイヤで、世界に同じ遺骨ダイヤは2つとありません。
お骨をダイヤにするのは非常識?
お骨をダイヤにするのが非常識かどうか意見が分かれてしまうかもしれません。
非常識、縁起が悪いという意見も否定しません。確かに、死後に人の手を加えてしまおうとする考え自体、自然の摂理に反していると言っても過言ではありません。一方で、ダイヤモンドは和名で金剛石と呼ばれている事をご存じでしょうか。
仏教で使われる金剛不壊(不壊金剛ともいう)から転じ、「如来の身は金剛の体なり」と記載され、仮に金剛石が仏の一部であるならば、遺骨ダイヤとなる事で仏に成ったとも考えられます。
金剛石に関しては、こちらの記事で掘り下げて解説していますので併せてご覧ください。
遺骨ダイヤモンドのブランド別費用まとめ
遺骨ダイヤモンドは日本より海外の方が主流なため、国内で完結するブランドはありません。
一部で国内の宝飾ブランドや葬儀会社が扱っていますが、取次代理店ばかりです。ここでは世界的に有名なライフジェム社(アメリカ)、アルゴダンザ社(スイス)はどちらも国内に支店もあり、日本人が対応してくれるため安心できます。どのブランドも海外へ遺骨や髪の毛を合成するため持ち出す事には注意しておきましょう。
どちらのブランドも費用はおおよそ50万円前後からという相場感です。葬儀会社などの取次代理店やブランドでの価格帯を調査すると、プラス10万円ほど費用が上乗せされている印象でした。海外ブランドであれば、これらの費用より安い値段もありましたが、日本語対応はしているものの、日本における窓口がないため不安です。
カラット | 費用 | |
ライフジェム社 | 0.1 | 49.5万円 |
アルゴダンザ社 | 0.2 | 52.8万円 |
あとがき
遺骨でダイヤモンドを作るなら、骨より髪の毛という人の方が多いのではないでしょうか。
骨を使った方が、なんだか気持ちの部分で、生まれ変わってそばに居てくれるような気がしますが、高温高圧といったダイヤ生成の過程を考えてしまうと、なんだか気が引けてしまうのは私だけでしょうか。
お墓に縛られたくない気持ちも分からない訳ではないので、遺灰は海に流して自然に返し、髪の毛で作った遺骨ダイヤを形見として代々家宝とするのも手かもしれません。