クラリティはダイヤモンドの美しさと価値を決めます。4Cの中でカラーと並びクラリティは、人の手で左右できないダイヤモンドの根幹となる美しさと価値を決めています。クラリティが低いとどうなるのか比較して紹介します。内包物はどのような意味と種類があるかも併せてご覧ください。
執筆者はしまだです。米国宝石学協会GIAホルダー、年間30件以上の鑑定に携わる。現在、Gem-A FGA取得に向けて研鑽しています。記事の編集ポリシー・レビューガイドラインも併せてご確認ください。
クラリティとはダイヤの透明度を決める
クラリティとはダイヤの透明度を確認する基準です。
クラリティは表面上の傷あるいは何らかの欠点(Blemishes)と内部に含まれた内包物(Inclusions)の有無や程度が評価され、透明度の高いFLからI3まで区分されています。 内外部に欠点が発見できなければFL(Flawless)、内部に欠点が発見できなければIF(Internally Flawless)、10倍ルーペを使って発見困難な内包物があるとVVS1,VVS2(Very Very Slightly Included)、10倍ルーペを使ってやや発見困難な内包物があるとVS1,VS2(Very Slightly Included)、10倍ルーペを使って発見が容易、肉眼では困難な内包物があるとSI1,SI2(Slightly Included)、肉眼で容易に発見できる内包物があるとI1,I2,I3(Included)となり、11段階に区分されています。
ダイヤモンドで基準となる4Cの意味とは
ダイヤモンドは4Cという国際基準があります。
4Cとはカラット(重さ)、カット(技術)、カラー(色)、クラリティ(欠点と内包物)の頭文字Cを取って4Cと呼ばれています。カットは5段階、カラーは23段階、クラリティは12段階とそれぞれにグレードがあり、ダイヤモンドの品質が鑑別されます。
ラウンドブリリアントとファンシーなどのカッティング、またローズやオールドヨーロピアン、オールドマインなどのアンティーク系のカットによって優先する4Cの要素が違ったりします。一方で、4Cという概念が浸透した事によって素人でも4Cの評価を確認することでダイヤモンドの価値が一定水準で判断できるようになりました。
4Cに関してはこちらの記事で詳しく紹介しています。
ダイヤモンドのクラリティ比較
ダイヤモンドのクラリティ比較をしてみましょう。
欠点と内包物によって一体どれだけクラリティが変化するのか、このテーマではクラリティの全グレーディングではなく全6カテゴリー(FL、IF、VVS、VS、SI、I)を比較しました。比較条件として、クラリティ以外の4C条件として約1カラット、Eカラー、Excellentとしました。
内包物はダイヤモンド画像右にあるストーンプロット(Clarity Characteristics)を確認ください。Iクラリティは確かに肉眼で把握できる内包物がありますが、SI以上になると価格差は肉眼で判別するのは難しいのではないでしょうか。実際に比較してみるとクラリティグレードによってダイヤモンドの印象が大きく変わるかと思っていましたが、実はそうでもなかったという声をよく耳にします。
クラリティ | 価格 |
FL | $13,350 |
IF | $9,230 |
VVS | $8,380 |
VS | $6,280 |
SI | $4,870 |
I | $3,090 |
ダイヤモンドのクラリティが低いとどうなるか
ダイヤモンドのクラリティが低いとダイヤモンドの価値は下がります。
先ほどの比較表からすると、IクラリティとFLクラリティでは約4倍もの価格差があります。肉眼で判別できないSIクラリティでも約3倍も違います。なぜ価格が違うのか、それは美しさより希少性が高いためです。勿論、クラリティが低いと透明度が下がり、透明度の違いは、輝き(ブリリアンス)や虹のゆらめき(ファイア)に悪影響を及ぼすため美しさにも一理あるでしょう。
クラリティだけに限りませんが、アクセサリーとして楽しむため割り切って購入するのか、ジュエリーとしての価値も考慮して購入するのか、実際に4Cの条件を決める際には十分に配慮するべきでしょう。また、上位グレードであるVSクラリティ以上では10倍ルーペでも鑑別に差がありブレやすく、VS2とSI1の評価がされている時にはよく確認しましょう。
ダイヤモンドの内包物は一体なに?
ダイヤモンドの内包物は地球からのギフトです。
内包物は不規則性のあるダイヤモンドの特徴で、時に人工ダイヤモンドと天然を区別する際にも用いられます。一般的にはインクルージョンとも呼ばれ、サイズや量、配置、色に応じて評価され、必ずしも肉眼で内包物が確認できるとは限らないため、10倍ルーペを使う場合もあります。
例えば、ダイヤモンドの中に小さなダイヤやサファイア、ガーネットなど他の宝石が入っており、それらはコレクターがいるほど人気を集め、一部には一言で欠点だと言い切れない場合もあります。
最も一般的なインクルージョンは、クリスタル、クラウド、フェザー、ツインウィスプ、ピンポイント、グレインです。ここでは欠点や内包物の種類を紹介し、クラリティにどう影響しているのか紹介します。
Bearding
ガードルから石の表面に伸びる髪の毛のような線です。
程度によっては、まるで傷がついたように見え、灰色でぼやけた印象を与えてしまいます。
Cavity
空洞の内包物です。
多くは内部にあったものがカッティングによって表面化されたものです。汚れや油が溜まり、暗くなってしまします。
Chip
表面にある小さくて浅い人工の傷で、カッティング中のアクシデントによって生まれた損傷のことです。
Cloud
小さな内包物が集まっている状態のことです。
小さく拡散している場合には懸念する必要はありませんが、密度が大きくなると光を遮るためくすんだ印象を与えてしまいます。
Crystal / Knot
ダイヤモンドに鉱物が内包されていることです。
鉱物の種類によって、無色(ダイヤモンドの中に別のダイヤモンドが内包)、黒(カーボン)、赤みがかった(ガーネット)、緑がかった(ペリドット)などがあります。内包物が白色または透明な結晶の場合はKnotと呼び、多くは別のダイヤモンドの内包物だと考えられています。
Feather
小さな亀裂です。
程度の違いがありますが、表面やガードル近くに亀裂がっしている場合にはダイヤモンド自体の耐久性に影響を与えてしまいます。
Graining
かすかな線や筋のことです。
不規則な結晶成長が原因と言われ、内部が乳白色、または折り目や反射のように見えることもあります。
Indented Natural
くぼみにカットされず残った原石部分があることです。
多くはガードルに見られます。
Needle
細長い針状の内包物です。
密集していると透明度に悪影響を与えます。
Pinpoints
小さな点のように見える白または黒の結晶の内包物です。
Twinning wisps
他の内包物が組み合わさった状態です。
ダイヤモンドの成長が止まり、何らかの原因で別方向に再開した時に生み出されます。
あとがき
クラリティで扱う内包物の評価は十人十色です。
多くの人は欠陥だと評価しますが、一部ではその特徴を個性と評価する人がいます。例えば、Cludは雲というより小宇宙に見え、Twinning wispsは自然がもたらした奇跡の証のようだと思えてくるのは私だけでしょうか。