本物のダイヤモンド、それとも偽物なのか気になってしまう場合があります。モアッサナイトやジルコニアなどと比べた見分け方、ブラックダイヤやブルーダイヤが本物かどうか、ダイヤの魅力を再定義してしまいそうな、ナチュラルダイヤモンドの紹介も併せてどうぞ。
執筆者はしまだです。米国宝石学協会GIAホルダー、年間30件以上の鑑定に携わる。現在、Gem-A FGA取得に向けて研鑽しています。記事の編集ポリシー・レビューガイドラインも併せてご確認ください。
ナチュラルダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンド
ナチュラルダイヤモンドは本物のダイヤです。
ジュエリー用に使う一般的な4Cグレードとは違い、クラリティーが低い事自体に価値を見出し、自然な鉱物として密かに人気があります。ダイヤの輝きを求めていないため、ローズカットなどのアンティークなデザイン、ゴールドや真鍮などとの相性は抜群です。
また、昨今では人工ダイヤをラボグロウンダイヤモンドと称して販売されていますが、これも鉱物的な意味合いでは天然ではありませんが本物のダイヤです。ラボグロウンダイヤモンドの品質はますます向上していて、鑑定士でさえも鑑別のハードルは高くなっており、専用の機械を使う事がほとんどです。
人工ダイヤモンドに関してはこちらの記事で掘り下げて解説していますので、併せてご覧ください。
本物と偽物のダイヤモンドの見分け方
肉眼で試す事ができる本物と偽物の見分け方を紹介します。
人工ダイヤを始め合成石に関する技術革新は続き、値段が下がり品質も随分と向上しました。そのため、近年では簡易的なダイヤモンドテスターでは本物と偽物の違いを見分ける事も難しくなりました。偽物と呼ばれている模造ダイヤモンドとは、キュービックジルコニア(CZ)に代表される合成石、ジルコンやモアッサナイトなどの鉱石、クリスタルガラスなどです。
例えば、肉眼でも本物か偽物かを簡易的にチェックできる見分け方は、息を吹きかける、透かした線を見る、油性ペンで色をつける、これら3つが有名な方法です。なぜ、これらの見分け方が有効なのか併せて解説します。また、これらに加えて、もう少し手間をかけて見分ける方法も紹介しておきましょう。
一方で、あくまで簡易的な方法で大雑把な見分け方なので参考程度に留めておき、高額なダイヤの場合には必ず鑑定士に依頼する事をお勧めします。また、カラットの小さなダイヤは肉眼で見分けるにも限界があります。自宅で揃いそうな、ピンセットと虫眼鏡があれば準備しておきましょう。
息を吹きかけて熱伝導率を見分ける
本物のダイヤは熱伝導率が高く、その特性を利用した見分け方です。
熱伝導率が高い本物に息を吹きかけても一瞬で曇りが元に戻ります。一方で、ジルコニアやモアッサナイトなどの偽物では元に戻るまで時間がかかります。
熱伝導率 | |
ダイヤモンド | 22W/cm K |
ジルコニア | 3W/cm K |
ジルコン | 1.3W/cm K |
モアッサナイト | 3.5W/cm K |
透かした線で屈折率を見分ける
本物のダイヤは屈折率が高く、その特性を利用した見分け方です。
テーブルを下に(尖った部分を上に)置き、屈折率が高い本物から透かして線を見ても歪んでしまい見えません。一方で、ジルコニアやモアッサナイトなどの偽物ではそのまま透けて見えてしまいます。
しかし、モアッサナイトはダイヤと同等以上の屈折率ですから、同じ方法では見分けがつきません。そこで、モアッサナイトの複屈折という特質を利用します。今度はテーブルを上にして覗き込み、本物であれば1本、一方でモアッサナイトであれば2本に見えてしまいます。
屈折率 | |
ダイヤモンド | 2.42 |
ジルコニア | 2.13 |
ジルコン | 1.925~1.983 |
モアッサナイト | 2.65~2.69 |
油性ペンで親油性と疏水性を見分ける
本物のダイヤは親油性と疏水性が高く、その特性を利用した見分け方です。
確かに、本物であれば油性ペンで着色でき、水を弾きます。一方で、ジルコニアやモアッサナイトなどの偽物になると、油性ペンを弾き、水が馴染みます。しかし、小さなカラットになると実際に試してみるのは難しいかもしれません。
ルーペを使って刻印の有無を見分ける
ルーペを使って見分ける簡単な方法を紹介します。
クラリティの有無は一定のスキルが必要なため、ガードル部分に刻まれた刻印の有無を確認します。鑑定がされている本物のダイヤであれば、ガードル部分(ダイヤの側面)に個別番号が刻まれています。一方で、刻印されていない場合にも鑑定されていないだけで本物の可能性があります。おすすめは、カートン光学の25倍ルーペです。
ダイヤモンドテスターを使って見分ける
ダイヤモンドテスターは簡易的なものからプロ向けまであります。
テスターの中で最も簡易的な熱伝導プローブは、即座に熱伝導を検査してくれます。通販で数千円から手に入るため、鑑定を依頼するほど予算が取れない場合にはお勧めです。
最寄りの宝飾店に相談して見分ける
最寄りの宝飾店に相談して鑑定士に依頼する方法が確実な見分け方です。
大手ブランド店舗でなく、地域にある宝飾店であれば自社で販売したブランドでなくても鑑定を受けてくれます。宝飾店に相談するメリットは、余計な手間をかけずに見分ける事ができます。専門家によっては鑑定書を出さずに、簡易的に本物のダイヤかどうかだけでも鑑定してくれるケースもあるため、気軽に相談してみましょう。
最寄りの質店(買取ショップ)に相談して見分ける
最寄りの買取ショップに相談して鑑定士に依頼する方法が確実な見分け方です。
鑑定書が必要なく、本物かどうかだけを調べたい場合、買取ショップに持ち込めば無料で調べてくれます。勿論、単なる冷やかしだとマナー違反なので、他に売りたいものと一緒に持ち込みましょう。
多くの場合、相見積もりを複数店舗で行うためその場ですぐに売ってしまうのは非合理だと相手もわかっていて、本物であれば査定額の交渉をしてくる場合もあります。一方で、偽物の場合には買取査定額にダイレクトに影響するため、そこで判明するでしょう。
手間が面倒であれば、買取金額次第では本当に売ってしまうのも手かもしれません。
ブルーダイヤは本物であれば1カラットあたり数万ドル後半から
ブルーダイヤは希少性と人気が高いため、本物が出回る事は稀です。
世界で最も大きなダイヤモンド売買プラットフォームでも、100点以上の在庫が揃っている事を見かけた事がありません。本物のブルーダイヤは、一般的なダイヤに比べてより深い地層(マントル下部)で組成され、原始的なブルーカラーが特徴です。
実際には、世界中のコレクターから愛され、希少性も高いことからオークションの世界最高落札額上位に常にランクインしています。本物ではありませんが、人工のブルーダイヤは随分と値段が下がりましたが、それでも一般人にはまだ手の出せない値段が付いています。
一方で、人工ブルーダイヤでもなく、偽物とも言いづらいのがアイスブルーダイヤです。本物の天然ダイヤにトリートメント処理を行なって人工的にブルーカラーを追加させる方法です。本物のブルーダイヤに比べ、より鮮やかなブルーカラーが特徴です。
ブルーダイヤに関して詳しくはこちらの記事で掘り下げて解説していますので、併せてご覧ください。
ブラックダイヤは本物が少ない
ブラックダイヤは本物が少ない事で有名です。
ブラックダイヤで偽物だと区別するためには鑑定が必要ですが、カラーダイヤの中ではブラウンに次いで最も安いため、省略して販売されている事も少なくありません。
実はブラックダイヤ自体の採掘量が少なく、多くはブラウンやグリーン系などでクラリティの低いグレードのダイヤに人工的なトリートメント処理を施して色を極端に濃くする事でブラックダイヤと称して販売しています。ダイヤなので本物ではあるものの、本当にブラックなのか肉眼だけで判断するのは難しいでしょう。
ブラックダイヤに関して詳しくはこちらの記事で掘り下げて解説していますので、併せてご覧ください。
あとがき
本物のダイヤモンドか、偽物か自分で確認したくなる気持ちはわかります。
鑑定代金もそう安くありませんし、手軽に済ませるのも1つでしょう。しかし、高額なダイヤを買う場合、本物かどうか心配になりますが鑑定書なしで販売しているショップは皆無でしょう。
ただし、その鑑定書が本物かどうか鑑定協会の公式HPへアクセスして裏付けを取ったり、届いたダイヤのガードル部分を確認して個別番号が鑑定書と合っているかどうかは最低限、自分で確認するようにしましょう。